時間とは私にとって一枚の帯のようなもので、その帯をどこから切るか、そしてそれをどこに繋げるかという問題でしかない。時は全ての可能性を内包しているが、考えてもみてくれ。可能性の分かりきったゲームなど面白くもなんともないだろう?
 時の流れが早くとも、遅くとも、岸辺に立つ私には関係のないことだ。岸辺に一人立ちながら、見え透いた流れにただ流されていくだけの人間を哀れだと嗤っている。
 いや、実際、憐れみを掛けてはいるよ。もっとも、それ以上のものは無いはずだけれどね。
 あいにく私は被造物なんだ。神じゃない。

「じゃあ何故君は人間を見続けるんだ」

 そう、疑うことを知らない君は言う。
 さてね。私にもよくわからないよ。未知なる可能性を内包した人間という存在の愚かさを嘲笑いたいだけなのか、それとも、私自身もその流れに飛び込みたいのか……
 けれど、そんなことを言ったところで私の立場が変わる訳ではないし、君という人間が流れに翻弄されなくなる訳でもない。

 さあイーノック、行っておいで。
 私は今日も岸辺から君を観察することにしよう。




傍観者

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