「天使の本来の仕事はね」

 傷だらけになった体を地面に預けている彼を見つけ、私はにこりと微笑む。

「死した賢者を天の国へ迎え入れることなんだよ、イーノック」

 彼はひゅうひゅうと喉を慣らしている。既に虫の息となっている男にまたがり、その首に手を掛ける。
 どくん。
 どくん。
 熱い血流が首の皮越しに伝わる。
 ぐ、と体重を掛けると彼の微睡んだ瞳がぐるんと剥いた。

「なあ、イーノック」

 私は何度目かすら分からない、はっきりとした天使の微笑みを浮かべて、低く囁いた。

「今日も君を連れて行くよ」




誘いの鐘

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